タンケ歯科医院
□最寄り駅JR明石駅『タンケ歯科医院』歯周病治療/予防歯科/噛み合わせの改善治療
 

□顎関節症の治し方


 歯は顎関節の正しい位置関係を保持し、顔面周囲諸筋のバランスを整える役割をになっています。 そのバランスが崩れる原因はどこにあるのでしょうか。 新たに入れたものだから、暫くすると馴染むだろうと考えている方が多くいらっしゃいます。確かに暫くすると馴染んでくるのですが、その噛み合わせを基準に新たなものが入ったとしたら 徐々に顎関節の歪みが大きくなり その歪みに耐えられなくなった生体は、大きな負荷となり、様々な不定愁訴に悩まされます。 つまり、顎がおかしいと気付いた時は、初期の問題発生からずいぶん時間が経過しています。
 
  さて私たちはどの様なケースで間違いを犯し易いのでしょう

 

普通に噛んだ時、上下前歯が数ミクロンから数ミリ離れている噛み合わせは多く見受けられます。
もしこういうケースで、小臼歯から後ろまでの歯を同時に型をとろうとするとどうなるでしょう。

噛み合わせを記録する際に「はい噛んで下さい」と言うと、左右の顎関節はいとも簡単にねじれ現象が生じ(顎関節の偏位)その記録をもとに作られた修復物は、僅かに低いものが作られます。 つまり型をとる時は、どこかに正しい基準を残し 噛み合わせの記録をとることが 間違いを犯さない方法であり左右の臼歯を同時に型をとったり、前歯も含むフルマウスのケースを一度に型をとることは危険な行為です。

 

 次に顎関節のお話をしましょう。

 顎関節の形が未熟でのっぺらと小さく、或いは顎関節がおさまる頭蓋骨のくぼみの傾斜度が緩やかで短い場合は、顎関節が不安定で 噛み合わせもルーズで 顎もはずれ易く(脱臼)なることがあります。 左右の顎関節の大きさが明らかに違う場合や、顎関節の大きさに比べ頭蓋骨のくぼみが明らかに小さい場合は、仮歯を調整中予想もしない噛み合わせとなり私たちを困惑させます。 普段私たちは、患者さんをチェアーに寝かせた状態(仰臥位)で治療しますが、こういう難易度の高いケースではチェアーを起こし座位での噛み合わせの確認を頻繁に行い、噛み合わせの安定する所は何処か知ることが大切です。事実、治療中に何度も顎がはずれる人で、噛み合わせを整え顎関節が安定すると顎がはずれにくくなる経験があります。
 
  み合わせは、その人固有のものです
   噛み合わせのあり方を十分熟知した上で治療することが大切です。

しかし正しい噛み合わせを決められずに作られたものや削られるのが嫌だという理由で長期間放置されたものは、歯の前後的 垂直的移動が生じ、時間の経過と共に噛み合わせの崩壊につながります。

昨今、審美歯科という名の下で、いとも簡単にエナメル質を削り、顎関節の動きとそぐわない人工的な歯の形態で修復されたものを見ると悲しい限りです。

 

歯の形態を再現するヒント

  他に外形が残っている歯があれば、その形態を参考にし、全て削られている場合には歯根の方向(歯軸)を参考にし、前歯が削られている場合は、10代、20代に撮った写真を拡大し形態、歯並びを再現することもあります。

しかし人の歯の形態 噛み合わせ、つまり自然に作られたものは、そう簡単に再現できるものではありあせん。

噛み合わせのあり方は、上下犬歯の前後的位置関係により変わります

例えば、下顎の犬歯が上顎の犬歯よりやや前方にあれば、顎が横にずれる時(側方運動時)下の犬歯の切端は、上の犬歯の近心斜面を滑走し、すぐさま後方臼歯は離開します。それより前方に位置する場合は、中切歯 側切歯 犬歯も側方運動に関与します。

又やや後方にある場合は、上の犬歯の後方斜面及び第一小臼歯、時に第二小臼歯も側方運動に関与します。

つまり、犬歯は側方運動時の要となり、それ故太く長い歯根形態となり、大臼歯を保護します。

 

 噛み合わせの調整は、より小さな点と細い線で構成されます

  何故なら、人の手により作られたものは、天然歯と比べ より繊細に調整しなければ 歯根膜に負担を強いる結果となります。時には1ミクロン以下の調整が必要となることがあります。

咀嚼時 歯根と骨の間にある歯根膜といわれる線維組織は、8ミクロンの範囲内で沈むことによりその衝撃力を相殺してくれます。しかし人により微妙にその差があり、*フレミタスの消失があるその領域まで調節することができれば、安心して噛める状況になります。

  *フレミタスとは

噛み合わせる時、顎の側方及び前方運動時における歯の動揺のことで、噛み合わせの破壊つまり歯根膜への負荷となる力です。

 
  さて噛み合わせを元の位置に戻す(咬合再構成)ための第一段階は

 

  低くなった噛み合わせを元の高さに再現することから始めます。高さがうまく決まれば、7割がた前進したといってもいいでしょう。

臼歯は前歯に比べ何らかの理由により、かぶせにより修復されるケースが多く、そこで下の臼歯から改善します。前方から見て左右臼歯を比較し、いかにも低く作られている所をはずし仮歯でその高さを回復します。例えば左下はまずまずの高さで、右下が極端に低いようであれば右下をはずし左下の高さに合わせるようにします。

挙上する量は、右下を上げても左下が噛んでいることを目標とし、上げ過ぎると左の咬合は無くなります。右の咬合が低いということは右顎関節は後方に移動し、咬合を上げると、おのずと右顎関節は前方に移動し以前より楽な場所におさまります。

この操作を上下左右の高さを比較しながら、上下歯列が平面となるよう形態を修正します(咬合平面を整える)。咬合平面を整えるということは、つまり食べ物を歯の咬合面というテーブルにのせ噛み砕き易いようにするという意味合いがあります。しかし左右の顎骨の発育が一律でない場合には、咬合平面が斜面になることもあり、その成長過程に於いて咬合は安定したものとなるようです。

この操作中も不定愁訴は種々変化しますが、どこまで高さを上げるかは患者さんが教えてくれます。

何故なら快適な高さは筋肉に記憶されているからです。そこでより快適なものにするために、仮歯を天然歯に近い形態に修正しながら、咬合する所は小さな点に整えます。

ここまでくると、開閉口時の顎の音が消失し左右ぶれずに口が開け閉め出来る様になるかもしれません。

人それぞれに固有の噛み合わせの位置があります。その噛み合わせに少しでも近づいていくことができれば、人体の補正能力により何の不安もなく噛める領域に近づく可能性があります。

高さが決まれば、上下前歯の被蓋のあり方及び上下犬歯の前後的位置関係がおのずと解ってきます。

犬歯は前述したように、側方運動時の要となり、前歯は前方運動時の要(※アンテリアガイダンス)です。

 

  ※アンテリアガイダンスとは

前歯部の被蓋により生じる下顎運動のガイドで、臼歯や顎関節を保護します

 
その形態は臼歯離開のあり方を決定し、歯の長さや舌側の角度はフレミタスの消失により決まります。

  治療中その作られた噛み合わせが正しいか否かは、仮歯の破折や患者さんの反応、症状の変化でわかります。最終的には顎関節及び筋肉の痛みもなくなり、何の不安もなく噛める位置を見つけることができれば、仮歯も安定し患者さんの表情は穏やかになり饒舌になります。

 
  噛み合わせ、つまり顎関節が安定する位置とは
 顎関節は関節円板の中央の真下で、さらに関節隆起の下 つまり下顎窩の最前方で最上位にあり、年令と共に変化します。関節円板は下顎運動を円滑にし、顎関節に加わる力を分散し、外力から守る働きがあり、その中央にあたる部分は血管、神経が殆ど無く丈夫な繊維構造ですが、そこがずれると炎症を起こします。
 
噛み合わせが回復すると、炎症やストレスから解放され血液の流れは回復し、筋肉や顎関節の再生(リモデリング)が始まります。簡単に治るケースも多くありますが、難解なケースでは私たち、そして患者さんの忍耐力、諦めない精神力が大切です。

歯科治療の基本はもしも問題が発生すれば簡単にはずせ再治療し安価に回復させることです。

しかし骨と強固に結合するインプラントの植立方向の不備や接着力の高い材料、非常に硬く歯の色と何ら変りない材料の出現により今迄の様にはいかなくなっています。やむをえず歯を削る時にはエナメル質を少しでも残す最小限の削り方で、元の形態、噛み合わせを再現することが、歯を長く保つ秘訣です。

普通に噛めることは、幸せです。

 

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